日本で働くことになった外国人に知っておいてほしいこと(1)

外国人と働く [SIEN(異文化交流)]

―日本では明文化されていない知識が多い―

・「彼らは私の専門知識のために私を雇ってくれましたが…」
ジョーは日本企業のプロセス・エンジニアで、米国で設計され、日本で製造され、米国で販売される製品に取り組んでいた。彼は、この特定の製品タイプの設計ライフサイクルの専門家であり、最近では主要な競合他社で働いていた。入社して間もない頃、彼は日本人の同僚である井上と一緒に、プロジェクトの過程と手順を概説した文書を作成するのに多くの時間を費やした。この文書は、米国のプロジェクト管理実務の基本文書である。アメリカ側はこの文書なしでは適切に始めることができなかったので、ジョーはスケジュール通りにリリースされるようにできる限りのことをした。彼と彼のスタッフは原稿を準備していた。井上とは定期的な検討会を設けており、内容に異議はなかった。それでも、井上が書類を日本に送って許可を得てから2カ月後、2人は座っていた。
ジョーは何が問題なのだろうと思った。結局のところ、こうした種類の文書は米国では標準的なものだ。「ロケットサイエンスではありませんよね?」「このようなプロジェクトをどうやって運営するのか?」苛立ちを募らせたジョーは井上に文書の現状を尋ね続けたが、日本側が文書を「研究中である」と聞いただけだった。ジョーは「彼らは私の専門知識のために私を雇った。なぜ彼らはそれを使わないのか?」と困惑した。

・日本人へのアドバイス
海外で事業を展開している日本企業は、現地の労働市場、業務プロセス、規制に関して大きな学習曲線に直面している。日本の本社は、新しい国でビジネスを始めるために日本人のマネージャーを派遣しているが、彼らは物事を成し遂げる方法を学ぶという課題に直面している。そのための方法の1つは、現地の専門家をスタッフとして雇用し、コンサルタントを使ってその方法を示すことだ。ジョーはそのような専門家の一人だった。ここでは、専門知識を求めて採用され、自分のメッセージが伝わらないと感じている場合に考慮すべき点をいくつか紹介する。

・言語の明瞭さを最大化
日本人は学校で英語を勉強したことがあり、読み書きができ、英語をよく話す。しかし、私が一緒に仕事をしている多くの日本人は、外国人が何を言っているのか理解するのが非常に難しいと言う。特に外国人が早口で話したり、2人のネイティブスピーカーが話しあったりするときだ。外国人が英語で話し合う会議での発言がすべて日本人に理解されているとは考えないほうがいい。また、日本人が理解していない場合、明確な説明を外国人に求めるとは考えないほうが無難だ。メッセージが重要な場合は、書面にするようにしたほうがいい。場合によっては、プロの会議通訳を雇ったほうがよいかもしれない。

・日本の状況を理解する
ジョーがプロジェクトを促進するために不可欠だと感じたプロセス文書は、明らかに日本側にとって優先事項ではなかったのだ。その理由を知るために、ジョーは日本ではどのように管理されているのか聞いてみた。彼は、日本側で使用されている同等のプロセス文書があるかどうか、もしあればサンプルを見ることができるかどうか尋ねることにした。もし同等のプロセスが存在しない場合は、なぜ存在しないのか。なぜ必要なかったか。もちろん、同社は過去に成功したプロジェクトがあり、実際に実行している。ジョーはもっと調べることにした。
ジョーが問い合わせたところ、日本側ではこのような詳細なプロセス文書を使用していないことが判明した。プロジェクト関係者全員が10年にわたって同社で働いており、プロジェクトの計画や実行方法に精通していたからである。彼らは、物事がどのように行われたかを説明するマニュアルを必要としなかったのだ。
これらの質問をして状況を把握すると、ジョーは米国の状況を説明することができた。

・コンテキストの指定
アメリカでのビジネスのやり方に関する多くのことは、アメリカ人には明白だが、日本人には明白ではない。プロセスドキュメントの重要性を説明するために、ジョーは米国の労働市場と多くの技術分野におけるプロジェクトベースの雇用の基礎状況を話した。ジョーは井上に、プロジェクトのエンジニアの多くは初めて一緒に働いていて、異なる会社から採用されたと話した。彼らはチームがどのように働くべきかを明確にしたプロセス文書があることに慣れていた。

・オープンマインドであること
もしあなたの専門家としての役割が、日本人の考えを変えて、あなたが勧めるようにしてほしいのであれば、機転とオープンさが必要だ。まず特定のプロセスまたはタスクが日本でどのように処理されているかを調べる。それとあなたのメソッドの間に類似点があるかどうかを調べ、そこから構築する。日本では日本人のやり方で非常に成功していることもあることを認識する必要がある。その強みを尊重し、評価することが、アドバイスの出発点であるべきだ。

・ギブ・アンド・テイク
ジョーは最初、井上とともにドキュメントを迅速に完成させた。井上は会議の間、ほとんど何も言わず、ジョーの言うことすべてに賛成のようだった。ジョーは井上が同意しなければ、自分の考えに異議を唱えるだろうと思った。後にジョーは、井上が押し戻さなかったからといって、ドキュメントを理解したりサポートしたりしたわけではないことに気付いた。ジョーが再びディスカッションを開始すると、より具体的な質問を行い、ドキュメントをより受け入れられるように変更することについて井上からアドバイスを受けた。

・同僚との人間関係の構築
あるときジョーは「ご存知ないかもしれませんが、このドキュメントは米国では標準的な方法です。郷に入っては郷に従えと言います」と井上に言いたくなったが、それは逆効果だ。日本人は、何かを押し付けようとする外国人に表面上は礼儀正しくするが、押し付けようとすると逆効果になる。ジョーはすぐに、井上が自分のメッセージを伝える上で最も重要な味方であることに気づいた。たとえ専門家であっても、人間関係を築き、他人の意見を尊重することが重要だ。

[SIEN(異文化交流)]
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ライター情報
島田 亮司

ストックホルム大学交換留学を経て、中央大学法学部卒業。都内の大手教科書出版社に入社、主に英語辞典や教材の編集、異文化理解教育のテキスト製作を担当。その後、PHP研究所にて英文月刊誌の副編集長として国内外の取材、執筆、編集に携わる一方、松下幸之助研究の研究スタッフとして外国人経営者向けの研修セミナーの企画、運営、講演を行う。また、1997年設立のNPO国際交流団体SIEN(埼玉県国際交流協会登録)の代表として現在までの22年間、異文化理解、交流促進に関わる社会活動をする他、在日外国人向けに賃貸物件のアドバイス等を行う。宅地建物取引士。英語通訳案内士。ジャパンラーニング(株)国際部講師。Manabink LLC 代表 ( https://manabink.com )

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